為替相場の理と奔流~時に「暴走」する市場~

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円高のおかげ

 経済や生活に大きな影響を与える円相場。よく耳にする割には数字を言われただけでは実感として分かりにくくないだろうか。その理由は、1ドル=100円とか1ドル=80円といった具体に、世界の大国である米国のドルを基準にして値段を示しているためだ。

 逆に、100円=1ドルとか、100円=2ドルと表示すれば、円の価値が上ってアメリカで2倍の買い物ができることがひと目で分かり、海外旅行に行こうと考える人が増えるに違いない。

 円相場の影響は働いている職場や暮らし方などによってさまざまで、円高の恩恵を受けるのは海外旅行者だけでない。世間に宣伝はしないが、電力会社など資源を大量に輸入する企業を筆頭に、円高で得をする人が沢山いるのも忘れてはいけない。

 電力会社やガス会社は、石油や天然ガスをほぼ全量、海外から輸入。輸出は行っていない完全な内需産業で、円高になれば支払代金がその分だけ減って儲けが増える構図だ。

 2011年度の貿易収支は4兆4000億円の赤字に転落した。赤字幅は第2次石油危機に見舞われた1979年度の3兆1000億円を大きく上回り、過去最大を記録。3月に起きた東日本大震災で多くの工場が被災したのに加え、欧州債務危機に伴う世界的な景気減速の影響で輸出が大幅に減少したのが主因だったが、原発の運転停止に伴って火力発電で必要な液化天然ガス(LNG)や原油の輸入が膨らんだのも大きく影響した。

 この2011年度は円相場が1ドル=80円前後で推移。つい数年前の06年から07年にかけては1ドル=110円台だったのと比べれば、かなりの円高水準だった。産業界は例のごとく円高是正を叫んでいたが、もしも円安だったならば輸入額が押し上げられて貿易赤字が膨張。東京電力を筆頭とした電力各社は、LNGなどの購入費が拡大して赤字幅が膨らみ、経営の深刻さが増したのは明らかだ。

 「円高のおかげ」という面がなかったとは言えない。

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