為替相場の理と奔流~時に「暴走」する市場~

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通貨暴落の怖さ

 円相場は、1995年4月19日に1ドル=79円75銭というそれまでの最高値を経験。2011年10月31日に1ドル=75円32銭をつけ、最高値を更新したが、この間に起きた日米の物価上昇・下落の度合いを勘案すると、1ドル=60円くらいの円高にならないと95年と同じレベルの影響が産業界に出ない計算になるという。

 95年、経団連の豊田章一郎会長が村山富市首相に円高対応を直談判した。それほどの危機感が経済界にあったが、11年の場合は円相場が最高値から80円台に戻ると円高是正を求める産業界の声は聞かれなくなった。産業界が円高に耐えられる経営体質を築いてきたことの証左だとも言える。

 為替市場は様々な思惑が入り乱れ、時に大きく乱高下をするのは避けられないだけに、為替レートの変動ばかりに一喜一憂するのは、輸出企業からお叱りを受けるかもしれないが、あまり建設的ではない。また、円高是正を求められる場面が多い日本の中央銀行だが、本来の役割が通貨価値の維持にあることは論を待たない。第一次大戦後にドイツが経験した激しいインフレで通貨マルクが価値を失い、経済が大混乱した歴史は、自国通貨が信任を失う事態の恐ろしさを証明している。

 通貨価値の上昇が直接の原因となって滅びた国はないが、逆に、通貨価値が暴落すれば、その国の経済は破綻して立ち行かなくなる。国が滅びれば、その国の通貨が無価値になるのと表裏の関係だ。いやゆるアベノミクスにより円安が進み、景気の本格的な回復が期待されているが、その先にあるかもしれない通貨価値の暴落について思いを巡らしてみると、少しは時の情勢を冷静に眺めることができるに違いない。

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