廃炉の最前線へ~東電福島第1原発 視察ルポ~

  • X
  • facebook
  • hatena-bookmark

燃料見えず

 作業床は地表から36メートルのところにある。事故後しばらく残されていた鉄骨やがれきの代わりにぴかぴかの機械が置かれ、新設された研究施設のようだった。

 その中でも印象に残るのが、上部を覆う巨大なかまぼこ形のカバー。これだけで高さ17.5メートルもある。燃料を取り出す装置を風雨などから守り、放射性物質を外部へ漏らさないためのものだ。

 取材日の時点では、16枚に分割されたうちの8枚目までが設置されていた。燃料を取り出す装置に大きく書かれた「TOSHIBA」の赤い文字も、目を引いた。

 作業床の上には、低線量エリアが数カ所ある。「作業員らは休憩中、ここで待機するなど、被ばくをなるべく避ける工夫をしています」。経産省の木野参事官が話す。

 低線量エリアで最上階の説明を一通り受けると、木野参事官から「プールに近づきます」と言われた。使用済み燃料プールの近くは、放射性物質の遮へい体が設置されていないため、最上階の中でも特に線量が高い。気持ちが高ぶった。

 プールに近づき、落ちないように注意しながらのぞき込んだ。しかし、12~13メートルほど下にあるという燃料は見えなかった。落下防止の青いネットが張られていることもあるが、「なくても(今は)水が濁っていて見えないでしょう」(東電社員)。

 少しがっかりした時、「ピピューピ」という音が聞こえた。誰かの左胸ポケットにしまってある線量計が、0.02ミリシーベルト被ばくしたことを知らせるアラームだ。

 いやに耳に残る高音だった。東電社員が「1回目」と口に出す。その後も、アラームの音はちょくちょく聞こえた。

 東電社員が持っている測定器に表示されていた数値は、毎時0.8ミリシーベルト超。原発事故に伴う避難指示の解除要件の一つが、毎時0.0038ミリシーベルト(年間で20ミリ)以下とされていることからすると、あまりにも高い線量だ。

 被ばくしているのに何も目に見えず、何も感じることができない。その落差に怖さを覚えた。まさに今、廃炉作業の最前線に立っていることを感じた。

特集・新着

旬のトピックス

ページの先頭へ
時事通信の商品・サービス ラインナップ