日本の野球は、少ないチャンスをどう生かすか、無駄な失点をいかに防ぐか、の2点を主眼に、各選手が個々の技術向上を図りながら、細かい状況判断や駆け引き、読みといった要素を重要視するスタイルをあまねく浸透させる形で発展してきた。送りバントやスクイズが多用される高校野球が、最も象徴的な例だろう。
もちろん国内には豪打のチーム、本塁打を量産するチームも存在する。ただ間違いなくパワーが数段上のチーム、明らかに格上のチームと対戦するなら、「豪快な野球」のまま勝つのは困難。パワーのある相手と数多く対戦する国際大会になれば、日本伝統のスタイルを磨いて対抗するのが得策だ。高校や大学の強豪校を経てトッププロになった日本の野球エリートたちは、単に投げて打つといったことだけでなく、戦術や駆け引きに関しても高度な要求を受けて鍛えられ、多くが一定の素地を備えている。この点は、感覚的にプレーする選手が多い中南米諸国などに対して間違いなくアドバンテージになる。
どんなにパワーがあっても、ボールがうまくバットに当たらなければ勝利にはつながらない。何も考えずに走塁すれば、一つ先のベースも決して近くはない。力に頼った大雑把な野球にはスキもある。日本はチームプレー、チームワーク、戦術などを高めることでパワーやスピード、体格の差を補う必要がある。
各投手の米大リーグでの活躍ぶりやWBCの1、2回大会で実証した優れた投手力も、極論すれば同じ線上にある。狙ったところに正確に投げ分けるコントロール、打者の裏をかく配球。野球は体格の制限がない「無差別級」ではあるが、格闘技などと違って相手との直接のボディーコンタクトは多くない。だから、パワーで少々劣る日本の投手でも世界のトップで通用するというのは決して不思議なことではない。
日本は過去3回のWBCの2次ラウンド以降で計15戦している。うち3失点以下が9試合で7勝2敗。4失点が4試合で2勝2敗。5失点以上の試合は2試合しかなく、この2戦は打撃陣も活発でいずれも10-6(一方は第1回のキューバとの決勝戦)で勝利した。やはり投手陣と守備が踏ん張って相手を3点以下に抑え、1点でも多く奪って勝ちにつなげるのが得意のパターンだ。打棒の爆発で結果的に快勝した試合ももちろんあるが、競り合いの中から終盤になって差を広げた展開がほとんど。打撃の爆発力はやはり限定的で、強豪相手に序盤から大量得点を奪うような展開はそうそう望めない。だから、投手陣が早く崩れたり、序盤から大きなビハインドを追うような展開になると勝利は大きく遠のいてしまう。
パワー上位のチームと争う国際大会という条件下では、やはり「無駄な失点は極力防ぎ、少ない好機をうまく生かして競り合いをものにする」戦いが、日本にとって、いつの時代も基本形になるはずだ。細かい制球力を生かした投手陣の奮闘、それを効果的に引き出す捕手のリード、相手の攻めをしのいでかわす継投の精度、少ない好機を逃さないためのチーム打撃、一つ先の塁を抜け目なくうかがう機動力、控え選手を含めたチームの一体感-こうしたものが、その具体的な構成要素になる。日本の戦いを展望するとき、そうした点を徹底できるチームかどうか、ということが大きなチェックポイントになる。
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