98年大会の予選で、日本は初めてW杯本大会への扉を開いた。その2年前、96年アトランタ五輪予選では、銅メダルを獲得した68年メキシコ大会以来となる28年ぶりの五輪出場を決めた。Jリーグの創成期。W杯開催も迫っている。当時のサッカー関係者で、予選突破を願わなかった人はおそらく皆無だったに違いない。長年の悲願達成に向け、選手や関係者は一丸となって(たとえ一部に戦術的な意見の相違はあったとしても)ぶつかっていった。翻って近年はどうなのだろうか。98年W杯予選の途中で、大学の後輩でもある加茂周監督の解任に踏み切った当時の長沼健会長の決断と、今回ハリル監督の任を解いた田嶋会長の決断は、とても同列に論じられるものではないと感じる。
サッカー協会が強大な組織となって世間やスポーツ界に対する影響力を増し、それに伴って権力者への忖度や、さまざまな人事の影響が見え隠れする事象が増えてきたように映る。ハリル監督の解任劇も、協会内部の派閥争い、権力闘争が少なからず影響したと考えられる。重要な決定の裏には、さまざまな思惑が絡み合っているだろう。人間関係が複雑になれば、なかなか一枚岩とはなりづらい。ましてアジアのW杯出場枠が拡大し、「余程の失敗をしなければW杯出場は果たせるだろう」ということになれば、本当の意味での危機感も知らず知らずのうちに緩んでしまう。マンネリが生じる余地は大きくなっていく。
06年W杯。ジーコ監督が率いる日本が2敗1分けであえなく1次リーグ敗退を喫した直後、当時の協会会長が次期代表監督の名前をポロリと漏らしたことがあった。本来なら敗因の分析や今後への対策が論じられるところ、報道の焦点は新しい監督へと移ってしまった。サッカー協会は、苦い失敗の話題から早々に目をそらさせることに成功したわけだ。常に新しいニュースを求めるのがマスコミの特性。「ファンの人たちも、どうせすぐ忘れてくれるよ」ということだったのかもしれない。ただ、熱心に日本代表を応援し、敗因や課題を真剣に考えているようなファンにとってはどうだったのか。14年W杯ではザッケローニ監督の日本が2敗1分けで1次リーグ敗退。その後、大会の詳細な検証・分析が、少なくとも表向きには公表されず、不満を訴えたファンや関係者も少なくなかった。いずれも、応援してくれた人たちに対する誠実な対応とは言い難かった。
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